2015年11月18日水曜日

“プロのライター”になりたい人へ 前篇



 いつのまにか、私、18年間もライターをやっていました。

だからなのか、「どうやったら、ライターになれますか?」という質問を1年に3回くらいはうけます。


つい先日も、ほぼ同時に2人から質問を受けたので、ブログに書いてみようと思います。



質問者の中でも、本気でライター業で食べて行きたい人はおそらく半分に満たないとは思いますが、最近はまず、「どういうライターになりたいですか?」と聞いてみます。

数年前、まだ出版社に人を育てる体力があった頃は、「とにかく一度は現場を経験したほうがいい」と考え、何人かのライター志願者をアシスタントとして編集部に紹介しましたが、1人も巧く行きませんでした。


前職は文芸の編集者という女子もいたのですが、ライターとしては全然書けなかった。
「短い文章でも雑誌の水準に達するものが書けない。雑用をまかせたらすぐに辞めた」などと、紹介した編集部には、毎回、同じような文句を言われる始末。
そのうち、出版社はどこも「ライターは経験者しか使わない」というように。

 WEBを中心にメディアも増えて、あらゆる媒体から「ライターが足りていない」と聞くのに、ライター志願者がなかなかライターになれないとはどういうこと?


才能とか経験は抜きにして、何かしら他に理由があるはず。
 
しばし、考えてみました。

 ひとつは、発注側が求める「ライター」と志願者が思い描く「ライター」のイメージが
かけ離れているからだと気付きました。

よくよく話を聞けば、「ライターになりたい」人の大半は、自分の名前で本を出したり、メディアに露出したり、講演会をするような人になりたいと言います。

それは、「ライター」というよりは、「作家」のお仕事です。

“個人がメディア”として機能している時代。
「ライター」という職業の可能性は広がっているし、受け手(読者)にとっては、
「ライター」と「作家」の境界線はあまりないのかもしれません。

「ライター」として自分の連載をもち、著作を出版して、メディアに出演している人もたくさんいます。
 有名どころでは、吉田豪さん、速水健朗さん、武田砂鉄さんとか。
 活動範囲だけでいえば、いちおう、私もそうです


 でも、それは興味にまかせ、求めに応じた結果として、次第に、そうなっていっただけの話。

基本的には「ライター」と「作家」はまったく異なる能力を必要とする、別個な仕事だと私は認識しています。

「ライター」は、文章力と取材力という技術をもって記事を生み出す“職人”です。
作文と取材に関してはハイレベルな技術を備えているし、加えて、音楽や映画など何かしら深い専門知識をもっている人も多い。
さまざまな場へ行き、不特定多数の人に会う機会も多いので、バランス感覚やコミュニケーション能力が優れていることも求められます。



あくまで、「優秀なライター」の話。



実際は私もふくめ、現役ライターでも、すべてを備えている人はそういません。
だから、これらを備えていれば、時代とメディアが変化しても、コネや繋がりが一切なくても、絶対に売れっこになれます。

カメラマンやヘアメイクと違って、ライターは名乗れば誰でもなれてしまう。
でも、ほんとうは技術職です。
技術と知識が無ければ、お話にならないし、仕事はこない。
逆に、素晴らしい技術(と少しの営業力があれば)、長らく食べていけます。

ようするに、プロのライターとは、シンプルに技術と知識で食べていける人だと思う。


だから、私は「ライター」として高度で面白い仕事をいただけると誇らしく感じるし、本物の“職人”として、素晴らしい技術と知識と経験をもっているライターの先輩方を尊敬してやみません。

でも、ライター志願者の方々が目指しているのは、そういう職人的な「プロのライター」?


もし本気で、プロのライターを目指すならば、方法はシンプルです。


私が18年前にライターを始めた頃と同じように、雑誌でもWEB媒体でも「どんなに小さな記事でもいいから」と願い出て、とにかく書かせてもらうこと。
「安くていいし、何でもやる」という志願者への門戸はいまだ開かれているはずです。


SNSやブログで自己アピールする必要なんて全然ない。

主観で綴るブログと媒体で書く文章は根本的に異なるもの。
だから、実地で文章力を鍛えながら、実績を積み重ねるしかないんですよね。
最初は全然お金にならないし、地道で地味な作業の繰り返し。
でも、プロのライターになる“わらしべのワラ”はそれしかないです。

一方、もし、「作家」になりたいならば? 
あるいは、「作家的なライター」になりたいならば、また別な能力と努力が必要だし、もっと効率のいい方法があると思います。


(後篇に続く)

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