先日、まんきつさんこと、まんしゅうきつこさんとともに小田嶋隆さんのライティング講座へ。
小田嶋さんのコラムはかねてから愛読していました。
『コラム道』は、煮詰まった時にながめようと手元においてあるし、『友だちリクエストの返事が来ない午後』は、読みかえすほど味わい深い名著。
文章技術はもちろん、モノの見方と発想、思考のつながり具合が独特で面白い。難しいことも分かりやすく、でも、ちゃんとアンビバレントなままに表現してくださる。
技術と思考と表現力。後進のモノカキとして、かくありたいと憧れてやまないのですが、それ以上に、読者として、いろんなツボを刺激されて快感です。
12月4日行われた第4回は、文体と主語について。客員教授は、神足裕司さん。
たくさん、興味深い話がありました。
「文章の巧い人は日本に600万人くらいはいるけれど、モノカキとして食べていける人は、わずか。それは、独自の文体をもっているどうかが大きい。
でも、文体は、故意的に身につけられるものではなく、生まれつき備わっているものである」
(*要約です)
身も蓋もない話だけれど、小田嶋さんは、優しい処方箋も。
「自分にとっていちばん自然な語り口で書くとそれが自分の文体になる」
「文体は口調のようなもの。あの人みたいにしゃべろうとしないこと。不自然な言葉遣いをすると、秘めたる己の思考が外に出ない」
要は、のびのび書くのがいちばん。
基礎的な技術は必要不可欠なものだけれど、あとは、好きに話すように書けばいいということ。
他にも、「ボキャブラリーは多いほどいいけれど、中身が薄っぺらいのに言葉数だけ多いのはいかがなものか」など数多の示唆がありましたが……
何といっても、神足裕司さんとの対談。
対談は、小田嶋さんが事前に送ったという、神足さんへの質問を綴った手紙を読み上げ、神足さんとともに壇上にあがった息子の祐太郎さんが、返事を代読するという形で進められました。
2人は初対面とのことですが、ともに同世代のトップコラムニスト。
小田嶋さんが神足さんへ送った質問は鋭く、愛に満ちていました。
それに相対する神足さんの答えは、自然体にして深く。父の思想を受け継ぎ、血肉にして言葉を述べる祐太郎さんのサポートも温かかった。
とりわけ、印象的だったのは、“モノカキの自分語り”についての話。
「文章を書く時、“自分語り”をするとどうしても嫌らしくなってしまうから、自分は極力避けている。でも、神足さんの自分語りは、みじんの嫌らしさもない。それはどうしてなのか?」
という小田嶋さんの質問に対して、神足さんは……
「自分語りは気晴らしといいますか、他者を観察するように、自分を観察して書いている。自分語り自体が嫌らしいのではなく、自分を客観視できていない人間による“自分語り”や、自分を良く見せようとする人間の“自分語り”が不潔なのである」
(*要約です)
この示唆には、うなりました。
私自身も、コラムやエッセイを書く時に、どれくらい“自分語り”をするべきかはいつも悩みどころ。
ある人物やある現象について書いている時も、「自分のことも書いたほうが面白いのではないか?」とは思うものの、安っぽい自己顕示にならないであろうかと思って避けていた。
一方、経験を重ねるうちに、頑なに自分のことを語らないのも何だかズルいし、つまらない気もしていた。(だって、他人のことは言いたいこといっているのにね)
だから、時により、自分語りをしてみようと思うようになったものの、どう面白く自分語りをするかは、いまだ課題だったのです。
神足さんの最近の著書もいろいろと読んでみたい。
小田嶋さんのライティング講座。
次回は来年の1月8日、客員教授は、まんきつさんです。
私以上に、小田嶋さんの愛読者である、まんしゅうきつこ!
小話。
先日は完全にプライベートで講座に参加した、まんきつさん(と私)。神保町駅にて待ち合わせた彼女は、軽く変装していたので、誰だか一瞬、わからなかった。
(詳しくは述べませんが、アグレッシブな変装ではありません)。
なぜ、変装しているのかと理由をたずねると……
前々回の本講座に参加した時、受付でチケット代を払おうとしたら、スタッフの方に気付かれて、「無料でいいですよ」と言われた。
「それが申し訳なかったから、変装してきた」と。
「客員教授なんだし、ご厚意に甘えても良いのでは?」とツッコミつつも、思わず笑ってしまいました。
まったく長い付き合いではないけれど、何だか、彼女らしくて。
こんなにも控えめで含羞をもって、“まんしゅうきつこ”を名乗っている……。
「小田嶋さんにもバレてなかったよね!」って嬉しそうだったけど、おそらく、最初からバレていたと思われます。
そういえば、新刊『まんしゅう家の憂鬱』には、大学時代にアグレッシブな変装をしていたまんきつさんのエピソードも載っている。
今、読んでるところですが、めちゃくちゃ面白いので、本書については、改めて書きます。
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